男湯・女湯

姉から 年末年始の帰省予定を問い合わせる電話あり。
カクカクシカジカと日程を伝える。


「温泉に行くんだけど、あんたも勘定に入れておくわ。
 お盆の時は一泊二日だったから忙しかったけど、
 正月は2連泊にしたからユックリ出来るわよ。」


「勘定に入れておく」 って、わしゃぁ〜銭かよ?!
姉弟だから良いようなもの、他人様には失礼かと…。
せめて 「頭勘定」 とか 「頭数」 とかって言ってね。
まっ、代金は義兄が払うんだから、「勘定」 で良いのか♪


どんな温泉なのかを細かく説明する姉の声を受話器の遠くに聞き、
思いは今年の盆に帰省した時の温泉宿での出来事に・・・。



僕と姉夫婦に姪夫婦と一歳2ヶ月の姪の子、遼太郎。
夕食を済ませて部屋に戻ると布団が敷き詰められていた。
姉と姪は、次の間で遼太郎のオムツ替え。
姪が 「尿太郎ちゃぁ〜ん♪」 と あやしながらオムツ替え。
司馬遼太郎ファンの姪が名づけた遼太郎なのに、尿太郎って…。


義兄と姪の旦那は、布団に寝転がって大河ドラマを見ている。
僕は録画設定して来たので、見ないでおこうと思い風呂へ行った。



食事前に入った露天風呂からは綺麗な夕日が眺められたが、
夜は星空が綺麗かな?などと思いながら脱衣場で裸になり、
入浴の前に歯を磨こうと、洗面台の前で仁王立ち。
歯磨きを終えて浴室に入ると、湯船から かすかな声で、



  「 あのぉ〜、女風呂なんですが…。 」 と、御婦人の声。



 御婦人→  (;´Д` A          ( ̄ω ̄;) !! ← 僕



  「 ゴメンなさいっ! 」     C= C= C= C=┌(;・_・)┘
 


慌てて脱衣場に戻ってバスタオルを腰に巻き、
籠から浴衣を丸め取り、眼鏡をするのももどかしくして退散。
振り返った暖簾には、「滝川の湯」 と書かれ、
柱に掛けられた小さな板には、「御婦人用」 の文字。



そりゃぁ〜確かめずにサッさと入浴した僕も悪いけど、
朝まで通しで入浴出来る温泉場って、普通は深夜に替えない?
宿泊客が寝床に入る頃、従業員達が上がり湯につかり、
大まかな片付けをしてから、男女の風呂場の看板を付け替えるのが一般的。
夕食の合間に布団を敷くまでは良いとして、風呂場まで替えやがった。



男風呂に入りなおしたが、夏の温泉で冷や汗を流す羽目に…。



部屋に戻り、洗面所でタオルを干していると、部屋から姪の声。



「でさぁ〜、オバサンが部屋まで送ってくれたの。」



部屋に入ると、会議状態で姪の話しに聞き入る姉家族。


姉が、「あんた、変質者みたいな人を見なかった?」



   「 変質者? 」



「私が風呂に入っていたら男の人が入って来たんだって!
 内湯に居たオバサンが目撃したらしいの!
 私は露天風呂に居たから見ていないんだけど、
 オバサンがそいつを撃退して、露天風呂の私の所まで来て言ったの。」



「オネエチャン、今ね、変質者が入って来ようとしたの。
 オバサンだったから良かったけど、オネエチャンだったら大変!
 まだその辺に居るかもしれないから、
 オバサンが部屋まで付いて行ってあげるね♪」



親切なオバサンは、僕の大事な姪を変質者から守ってくれました。



   「 その変質者、僕です。 」



翌朝、恥ずかしい思い出を洗い流そうと露天風呂。
姪の旦那が入って来て、「おはようございます。」
と一礼して前を通り過ぎて、僕の隣に入浴。


「 今日は良いお天気ですね?! 」 と、ニンマリ。  

朝の清々しいニッコリでは無く、意味深な ニンマリ。 



姪の旦那 →  (¬_¬)    ( ̄∇ ̄*)  ←  僕



「 今朝は間違えなくて良かったですね♪ 」 と顔に書いてあった。