雲の絨毯

雲海…真っ白で、「美しい」 の一言に尽きる。


機長アナウンスで、たまに気の利いた話をするキャプテンがいる。


「只今、眼下に真っ白な美しい雲海が広がっております。
天上の景色とも思えますが、この雲の下では雨が降っております。
皆様が雨模様の地上にて気が滅入るような事がありましたなら、
今 御覧になっている真っ白な雲海を思い出して頂き、
地上より見上げる雨雲は暗いけれど、
その反対側に真っ白な雲海が広がっている事を想像し、
雨の日を楽しい気分で過ごされては如何でしょうか?!」


こんな機内アナウンスをしてくれた機長がいた。
それ以来、雨空を見上げる度に、
果てしなく続く真っ白な美しい雲海を思い出す。


気の持ちよう…と言うが、雨降りの日の楽しい過ごし方に、
ヒントをくれた機長に感謝。



数年前の夕刻に宮崎へ向かっていた全日空機の中での出来事。


「当機は間もなく着陸態勢に入りますが、
窓の日除けを閉めているお客様は、日除けを開けて下さいませ。」


それから間もなくして、機内がオレンジ一色になった。
隣の乗客の顔も、機内の全てがオレンジ一色になった。
窓の外に見えるのは、まるでオレンジ色の真綿のようだった。
アチコチから、「わぁ〜っ!」 と言う歓声が聞こえた。


西日に照らされてオレンジ色になっていた雲の塊に、
搭乗機が突入したのだった。


雲を通り抜けるのに3分とかからなかった。
着陸態勢に入った機体は高度を下げて、オレンジ色の雲から離脱。


「皆様、如何でしたでしょうか?
気流が安定した雲が西日に照らされていると言う、
数少ない条件下でのみ見る事ができる状況に、
皆様をご招待できた事を嬉しく思います。」


との機長アナウンスに拍手が起こった。
キャビンアテンダントでさえ喜びの笑みを浮かべていた。
乗客の日向灘を見下ろす目は、優しい気持が溢れていたに違いない。


今頃どうした…の話しだけど、
過去の NHK 連続小説ドラマを紹介した番組を見ていて、
浅茅陽子の 「雲のじゅうたん」 を見ていて思い出した。