本気
大分県出身だと言うお客さん。
「お名前は?」
「まじ です。」
「どんな字を書くんですか?」
「本気 と書いて、まじ です。」
「マジッすかっ?」
居るんですねぇ〜?! 大分県辺りには、結構ある名字だそうですわ。
「時間」 と書いて、「とき」 「理由」 と書いて、「わけ」
等と読ませる文章や歌詞は目にするが、
「本気」 と書いて、「まじ」 と言う名字があるとは…。
昼前にチャイムが鳴った。 「ピンポォ〜ン」
「ハァ〜イ!」
たいていは、「宅配便です。」 とか、返答があるものだが、応答が無い。
覗き穴から来訪者を確認すると、顎鬚を蓄えた中年男性が立っている。
在宅を確認しているのか、ドアー上の電力メーターを見上げている。
怪しい! 新興宗教の勧誘か、募金の要請か…?
もう一度、大声で尋ねた。 「どちら様ですか?」
「あのぉ〜、中日新聞ですが…。」
なぁ〜んだ、集金か。 財布を片手にドアーを開ける。
「年始の挨拶に参りました。」
と、粗品を差し出す。
「あっ、料金じゃないんですか?」
「いえ、雑巾じゃないです。 スポーツタオルです。」
僕の発音が悪いのか、彼の耳が遠いのか…。
スポーツタオルが雑巾大に折りたたまれていたのも、聞き違いの原因か?!
家の中からの、「ハァ〜イ」 が聞こえなかった事を考えると、
少し耳が遠くなっているのだろう。
「今年も宜しくお願い致します。」
と言ってエレベーターに向かう男性の背中に哀愁が漂う。
*「覗き穴」 って、何か他に言い方が無いのかな? と思って、
「ドアの用語集」 を参照したら、「ドアー アイ」 って言うんだね。