標準語と共通語

「ちゃんとやってるの?」 と問われた時、
「やってるよっ!」 と語気を強めて答えるとします。



今時の若者だと、「やってるしっ!」。
崩した感じで、「やってっしっ!」 とか答えるのでしょうね。



名古屋弁だと、「やっとるがやっ!」。



茨城弁だと、「やってっぺよ!」。



大分県出身のお客さんは、「やっちょるけん!」と言っていました。



「やっちょっと!」・「やっちょるばい!」・「やっちょろうもん!」。



九州弁って可愛いですよね。



先日、○ノ蔵と言う宮城県にある酒造会社の営業担当の方が来店しました。



最初は無理がある共通語で話をされていましたが、



のび太の姉が仙台に嫁いでいる事を話たとたん宮城弁になってしまいました。



それ以降、その方の話す内容が半分ぐらいしか理解できなくなりました。



ひえぇ〜っ! 仙台弁に慣れたつもりでいましたが、



同じ宮城県でもこれほど違うのだと言う現実に直面しました。



その方は栗原市の出身だと言うのです。



栗原市岩手県秋田県と接する宮城県の北西部に位置する市です。



以前、盛岡市に住む現在90歳を超えた伯母の家を訪ねた事があります。



盛岡駅前から伯母に電話をし、盛岡駅前からタクシーに乗車して、
伯母の家までを運転手さんにどう説明すれば良いのか尋ねたのです。



伯母が話し始めると、全てがチンプンカンプンの言葉。



「伯母さん、後で電話を掛け直すから!」と伝え、
観光客向けのわんこ蕎麦屋で昼食をとり、
そこの若い女性店員に事の次第を伝えて伯母に電話をして頂きました。



その若い女性店員さんが電話を切った後に言いました。



「随分と訛った方ですね。私でも分からない所がありました。」って。



伯母は釜石市に嫁いで晩年に盛岡市に住んだので、言葉は釜石方言。



日本全国、どう言う訳か海沿いの方言はキツイですからねぇ〜。



父方の伯母は台湾に嫁いでいるので、従兄弟とは英語が共通語ですが、



母方の盛岡の伯母は日本共通語が話せないので通訳が要ります。



勿論、会って話してしまえば、身振り手振り、表情や話の流れなどで、
かなりの部分まで理解できるのですが、電話での会話は理解し難いです。



ここで共通語と言う言葉に執着するのは、
のび太が小学生6年生の時の担任の先生の影響なのです。




「日本語に標準語はありません。東京弁と言う共通語です。
 世界の共通語が英語であるにしても、
 英語が世界の標準語では無いのです。
 自国の言葉を捨てて英語教育だけをする国は少ないでしょう。
 母国語の教育に加え、世界共通語である英語教育がなされるべきです。
 皆さんが話すお国言葉を大事にしながら日本共通語を学んで下さい。」




小学生ながら感銘を受けた話でした。
自分の訛りに自信が持てた話でした。
なので、のび太は未だに訛りがとれません。(笑)




Wikipedia からの引用ですが、ここに標準語と共通語の概念を転記します。




日本における日本語話者の間で、方言の違いを超えて
誰でも共通に理解しあえる言語のことを共通語という。
例えば、沖縄県宮古方言話者と沖縄方言話者が
それぞれの方言で会話しようとすると相互理解が困難であるが、
どちらにもよく知られている東京方言やウチナーヤマトグチを話せば、
互いの意思疎通を容易にすることができる。


1949年に国立国語研究所福島県白河市で学術調査を行った際、
東北方言と標準語の中間のような日本語を話す話者が居る事が確認された。
これについて国立国語研究所は、
全国共通に理解し合える「全国共通語」であると評価し、
「共通語」と呼ぶ事にした。それ以降、この「共通語」という呼称を
従来の「標準語」の代わりに使う事が急速に広まった。
その理由について国立国語研究所の言語調査を主導した柴田武は、
「標準語という用語に伴う『統制』と言う
 付随的意味が嫌われた為だと思われる。」と述べている。
柴田は、1980年に出版された『国語学大辞典』において、
共通語と標準語の定義の違いについて、次のように述べている。


共通語は現実であり、標準語は理想である。
共通語は自然の状態であり、標準語は人為的につくられるものである。
したがって、共通語はゆるい規範であり、標準語はきびしい規範である。
言いかえれば、共通語は現実のコミュニケーションの手段であるが、
標準語はその言語の価値を高めるためのものである。


          国語学会編『国語学大辞典』東京堂出版、1980年9月




また、こんなご意見も・・・。






「人工的に作られた標準語に対して自然発生的に誕生したのが共通語です。
そして共通語もテレビが普及し、進学や就職で人々が行動範囲を広げ、
言語的接触をすることで全国に広がり、進化していきます。
元はどこかの方言でも、皆が使って共通に意思を通じ合えるようになれば、
それは共通語に昇格するんです。」




こんな理由から、のび太は「標準語」と言う言葉が嫌いなのです。(笑)